
「ステンレスは錆びない金属」というイメージをお持ちの方は多いのではないでしょうか。
実は、ステンレス(SUS)は一種類ではなく、数十種類もの材質があり、それぞれ成分や性質が異なります。
「ステンレスだから大丈夫」と思って選んだ材質が、実際の使用環境では想定より早く錆びてしまったり、逆に必要以上にコストの高い材質を選んでしまったり、といったケースは少なくありません。
この記事では、ステンレスの基本から主な分類、代表的な材質の特徴、そして選び方のポイントまでをわかりやすく解説します。部品や製品の材質選定にぜひご活用ください。
そもそもステンレスとは?錆びにくい仕組み
ステンレス(正式名称:ステンレス鋼)とは、鉄にクロムを10.5%以上添加しており、炭素含有量が1.2%以下、鉄(Fe)が50%以上という条件を満たした合金のことです。
「SUS」という表記は、Steel Use Stainlessの略で、日本工業規格(JIS)におけるステンレス鋼の記号です。
ステンレスが錆びにくいのは、表面にできる「不動態被膜」という薄い酸化被膜のおかげです。
クロムが空気中の酸素と結びついてこの被膜を作り、傷がついても自然に再生する性質があります。この自己修復機能こそが、ステンレスの錆びにくさの正体です。
ただし、ステンレスは「絶対に錆びない金属」ではありません。
海水や塩素を含む環境では不動態被膜が壊れやすくなりますし、他の金属からの「もらい錆」が発生することもあります。使用環境に応じた材質選定とお手入れが、長く使い続けるための鍵になります。
ステンレスは大きく5系統に分類される

① オーステナイト系(SUS304・SUS316など)
クロムに加えてニッケルを含む系統で、ステンレス全体の生産量の約6割を占める、もっとも流通量の多いグループです。
非磁性であることが特徴ですが、加工によって部分的に磁性を帯びることもあります。
耐食性・加工性・溶接性のバランスが良く、SUS304やSUS316はこの系統の代表格です。
迷ったらまずオーステナイト系を検討する、という選び方をされる方も多いです。
② フェライト系(SUS430など)
クロムのみを含み、ニッケルを含まない系統です。
ニッケルは希少金属のためコストに直結する成分で、これを含まないフェライト系は価格を抑えやすいのが特徴です。
磁性があり、磁石にくっつきます。耐食性はオーステナイト系よりやや劣りますが、屋内用途や意匠性重視の製品など、過酷な腐食環境でなければ十分に活躍します。
③ マルテンサイト系(SUS410・SUS420など)
焼入れによって硬度を高められる系統です。
磁性があり、強度・硬度を重視する用途に向いています。
耐食性はオーステナイト系・フェライト系に比べると劣りますが、刃物や工具、シャフトなど摩耗や衝撃に強さが求められる部品でよく使われます。
④ オーステナイト・フェライト系(二相系)
オーステナイト系とフェライト系、両方の性質をあわせ持つ材質です。
高い強度と耐食性を兼ね備えており、化学プラントなど過酷な環境向けの特殊用途で使われます。
⑤ 析出硬化系(SUS630など)
熱処理によって強度を高められる特殊なステンレスです。
航空機部品など、高い強度と耐食性の両立が求められる限定的な用途で使用されます。
系統比較表
| 系統 | 代表鋼種 | 磁性 | 耐食性 | 価格帯 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|---|
| オーステナイト系 | SUS304, SUS316 | 非磁性 | 高 | 中〜高 | 厨房機器、医療、食品 |
| フェライト系 | SUS430 | 磁性あり | 中 | 低 | 建材、家電外装 |
| マルテンサイト系 | SUS410, SUS420 | 磁性あり | 中 | 中 | 刃物、工具、シャフト |
代表的なステンレス材質を解説

ここからは、実務で特に登場する機会の多い3つの材質を詳しく見ていきます。
SUS304|万能型の定番ステンレス
クロムを約18%、ニッケルを約8%含むことから「18-8ステンレス」とも呼ばれます。
全ステンレスの生産量の約6割を占めるオーステナイト系ステンレスの中で最も生産量が多く、汎用的な材質です。
耐食性・加工性・溶接性のバランスに優れ、特別な理由がなければまずSUS304が選ばれる、というのが実務上の感覚に近いです。
✓主な用途
キッチン用品、建築の内外装、一般機械部品、医療機器など
SUS316|海・薬品に強い高耐食ステンレス
SUS304にモリブデンと呼ばれるレアメタルを加えた材質です。モリブデンがクロムの自己修復作用を高めることで、塩化物イオンに対する耐性が向上し、海水や薬品など過酷な環境でも腐食しにくくなります。
モリブデンを含む分、SUS304よりも高価になりますが、「錆びては困る」「腐食すると重大なトラブルにつながる」という用途では積極的に検討する価値があります。
✓主な用途
船舶・港湾設備、化学プラントの配管・タンク、医療機器、食品加工装置
SUS430|コストを抑えたい場合の選択肢
ニッケルを含まないフェライト系の代表的な材質です。
SUS304と比べて耐食性はやや劣りますが、コストを抑えられるのが最大のメリットです。
見た目はSUS304とほとんど変わらないため、過酷な腐食環境でなければ代用材として広く使われています。
✓主な用途
家電製品の外装、建材、一般的な機械部品のカバー類
ステンレス材質の選び方

複数の材質から最適な一つを選ぶには、次の3つの軸で考えると整理しやすくなります。
① 使用環境
屋内か屋外か、塩分や薬品に触れる可能性があるかを確認しましょう。海沿いや化学薬品を扱う環境であれば、SUS316をはじめとする高耐食材質の検討が必要です。
② 必要な強度・硬度
摩耗や衝撃を受ける部品であれば、焼入れで硬度を高められるマルテンサイト系が候補になります。一般的な構造部品であれば、オーステナイト系で十分なケースがほとんどです。
③ コスト
ニッケルやモリブデンといった希少金属の含有量が、そのままコストに反映されます。過剰なスペックの材質を選ぶと、必要以上にコストがかさんでしまうこともあるため注意が必要です。
迷った場合は、図面の段階で加工業者に相談するのも一つの方法です。使用環境や求める性能を伝えることで、コストと性能のバランスが取れた材質を提案してもらえることもあります。
ステンレスの板金加工で押さえておきたいポイント

ステンレスは錆びにくく扱いやすい印象がある一方、加工そのものは決して簡単ではありません。
ステンレスは加工することで材料自体が硬くなる「加工硬化」という性質を持っています。さらに熱伝導率が低いため、加工時に発生した熱が逃げにくく、工具への負担が大きくなりやすい素材でもあります。
そのため、タレパン加工・レーザー加工・曲げ加工・溶接といった各工程において、材質特性を理解した上での条件設定やノウハウが、仕上がりの精度や品質を大きく左右します。
スエナミ工業のステンレス加工対応力

スエナミ工業株式会社は、岐阜県関市を拠点とする精密板金加工メーカーです。
1957年の創業以来、航空機部品の加工から始まり、現在は食品機械・医療機器・産業機械・空調機器など幅広い分野の部品製作に携わっています。
タレパン加工・レーザー加工・曲げ・溶接・研磨・表面処理まで、板金の全工程を社内一貫で対応しています。
- 豊富な加工実績
食品・医療・半導体分野など、高い清浄度や耐食性が求められる現場での実績が豊富です。 - 材質選定からのご相談に対応
「どの材質を選べばいいかわからない」という段階からでも、使用環境やご予算に応じた材質提案が可能です。 - 多品種少量から超特急品まで柔軟に対応
「1個からの試作」「急ぎで作成して欲しい」といったご要望にも、社内一貫体制だからこそ柔軟に対応することが可能です。 - 3,000種以上の加工実績
創業以来培ってきたノウハウで、難しい形状や高精度な要求にもお応えします。
材質選定から加工方法のご相談まで、どんな些細なことでもお気軽にお問い合わせください。